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今回は、韓国の兵役制度に関連して、良心的兵役拒否と代替役務に関して記事を書きます。
結論から述べると、2012年2月初頭の時点では、韓国は良心的兵役拒否を一切認めておらず、代替役務も制度化されていません。そのため、毎年700人~800人程度の男性が兵役法違反の罪で有罪判決を下され、刑務所に収監されています。 過去、国連人権委員会から「韓国政府は良心的兵役拒否を合法化して、代替役務を制度化せよ」という勧告を受けたため、ノ・ムヒョン大統領が政権を握っていた時代に政府に委員会が作られて検討もされましたが、「国民世論が成熟していない」という理由で導入が見送られ、そのまま現在に至っています。ちなみに、徴兵を拒否して逮捕・起訴されたケースの何件かでは、地方裁判所のレベルで「兵役拒否者の良心を正当な理由として認定し、無罪判決が何度か出ています(例えば、2004年の「ソウル地裁が良心的兵役拒否者に初の無罪判決」を参照)。しかし、憲法裁判所(韓国における最高裁)では、 「兵役の義務が履行されず国家の安全が保障されなければ、人間の尊厳と価値も保障されない。良心の自由が国防の義務に優越する価値とはいえない」 という理屈で良心的兵役拒否を認めず、有罪とする判決が下されました。 現在、世界的に徴兵制廃止の流れが加速されており、近年になり、スウェーデンやドイツですら徴兵制が廃止されました。その他の欧州各国は殆どが志願制に移行しています。未だに兵役義務があるのはスイスやノルウェー、デンマーク、フィンランド、ギリシャ、オーストリアのみです。これらの国でも、良心的兵役拒否は合法化されており、軍隊での兵役を拒否する者には代替役務として介護や消防などの非軍事的役務を選択することが法的に保障されています。また、台湾も「代替役」という呼称の制度を発足させており、良心的兵役拒否を合法化しています(なお、「台湾は2013年から徴兵制を廃止して志願制にする」と報道されていますが、実際はその後も4ヶ月の軍事訓練は義務として残るので「徴兵制廃止」ではなく、「兵役期間短縮」と言った方が正しい)。 このように、世界的には多くの国で徴兵制が廃止され、志願制に移行しています。また、徴兵制が残存している国でも殆どが良心的兵役拒否を認めている中、一切認めていない韓国は徴兵制存続国の中でも極めて特殊な国であると言えます。 そのため、良心的兵役拒否が認められていない状況を理由としてカナダなどへ亡命する韓国籍の男性も存在します(聯合ニュース参照)。現在、韓国では「良心による兵役拒否権の実現と代替服務制度の改善のための連帯会議」という市民団体が結成され、良心的兵役拒否の合法化と代替役務の制度化を目指す運動をしています。 以下、良心的兵役拒否に関して参考となる書籍を集めました。是非、ご一読ください。 |
今回は、前回の続きです。韓国の兵役制度の「兵役特例」に関して説明します。
前回の記事で、専門研究要員、産業機能要員、義務消防、義務警察などについて軽く説明しましたが、今回はこれらの制度の適用条件に関してもっと詳しく解説します。 まず、専門研究要員ですが、これは理工系の修士課程か博士課程を修了し、指定された研究機関に就職した者が対象の制度です。例えば、アジュハイテック・グローバル株式会社が1999年11月に韓国の兵務庁から指定、株式会社ザイニックスが2001年に専門研究要員兵役特例業社に指定されています(ザイニックスは2000年に産業機能要員兵役特例にも指定されています)。他にも多数の企業が兵務庁から指定を受けており、そこに就職することで通常2年間の兵役を4週間の基礎的軍事訓練のみに短縮することが可能となります。 次に、産業機能要員に関してですが、こちらは特に学歴の制限は存在しません。ただし、修士課程に進学してしまうと産業機能要員の適用がなされなくなるため、この制度の適用を受けるためには大学を卒業する前に指定された企業で勤務する必要が出てきます。条件としては、指定された各種資格・免許を取得した上で指定された企業で3年間勤務することです。資格としては、情報処理や電気・無線、化学関係など幅広く指定されており、応募する企業によって求められる資格が異なっています。3年間、産業機能要員の指定企業で勤務し、4週間の基礎的軍事訓練を受ければ通常の2年間の兵役を果したことと同等と見なされます。上述したように、大学院に進学すると、この制度の適用外となってしまうため、産業機能要員を目指す場合、大学学部在籍中に資格を取得した上で、一旦大学を休学して指定された企業へ勤務することになります。 最後に、義務消防と義務警察について述べます。これらは、通常の軍の部隊に配属される代わりに、警察部隊や消防に配属されるという制度です。最前線の生命の危険が高い部隊に配属されるリスクを避けることが可能なため、専門研究要員や産業機能要員になれなかった人が次善の策として応募するケースもあるようです。この制度は、特に学歴や資格の制限は存在せず、試験のみで採用・不採用が決まります。 |
徴兵制廃止国と存続国の一覧です。
Wikipedia「徴兵制度」のページより「徴兵制度の世界地図」(赤:徴兵制、青:志願制) ・徴兵制廃止国(法的に存続していても、実際の運用を停止している国も含む) 日本、中国、ミャンマー、カンボジア、インドネシア、 アメリカ、カナダ、 チリ、アルゼンチン、ペルー、 オーストラリア、ニュージーランド、 インド、パキスタン、アフガニスタン、イラク、サウジアラビア、 イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、ポルトガル、オランダ、ベルギー、 アイスランド、スウェーデン ・徴兵制存続国 メキシコ、ブラジル、韓国、北朝鮮、台湾、シンガポール、マレーシア、タイ、ベトナム、ロシア、 イラン、トルコ、エジプト、オーストリア、スイス、フィンランド、ノルウェー、デンマーク、イスラエル ※ただし、一言で「徴兵制」と言っても、色々な形態(期間、徴兵率、性別、週末だけ通って訓練を受ける、良心的兵役拒否の可否など)があり、徴兵制存続国の間でも、相当に差異がある。一例を挙げると、メキシコの徴兵制は週末だけ軍の基地に通って訓練を受けるだけのものである。また、ブラジルの徴兵制は免除規定が数多く存在しており、逃れたい人はいくらでも回避可能。それに対し、イスラエルは女子にも兵役義務を課している。また、韓国や北朝鮮、イラン、シンガポール、トルコ、エジプトは良心的兵役拒否を合法化していない。ロシアは大学で軍事教練を受ければ兵役が免除となる(プーチンは大学での軍事教練で兵役を免除された)。マレーシアの徴兵制は男女ともに課せられるが、軍に入隊して実際に戦争や紛争に行かされるのではなく、国防省の管理下で6ヶ月間共同生活することで国民の一体感を強化する目的の制度で、マハティール元首相の提唱で導入されたものである。 ・良心的兵役拒否を一切合法的に認めておらず、免除規定も極めて厳しい国 韓国、北朝鮮、トルコ、イラン、エジプト、イスラエル、シンガポール、ベトナム |