前回は中東地域の兵役制度の概要を説明しましたが、今回は
イスラエルの兵役制度に関して詳しく解説します。
現在、イスラエルでは
男子に対して
3年、
女子に対して
1年半の兵役が義務とされています。女子に対しても兵役が義務とされているのがイスラエルの特徴です。なお、現在の世界で
女子にも兵役義務を課しているのは、
イスラエルと
マレーシアのみです。ただし、マレーシアの「兵役」というのは、正式には「National Service」(国民役務)と呼ばれるものであり、通常の意味の兵役(韓国や北朝鮮などで施行されている徴兵制)とは性質がかなり異なっています。元マレーシア首相の
マハティール氏が「国民の団結・統合」(マレーシアは、
中華系、
マレー系、
インド系の3大民族が共存する多民族国家なので、各民族ごとに社会が分裂する傾向がある)を促すために導入した制度であり、韓国軍みたいな訓練を兵舎に住んで実施するわけではありません(18歳以上の抽選で選ばれた男女が6ヶ月共同生活するという制度。ただし、国防省の管理下で一部軍事訓練を含むため、「兵役」と呼ばれることもある)。従って、厳格な意味で徴兵制が女子にも課せられているのは現状ではイスラエルのみと言えるでしょう。
期間に差があるものの、
男女平等に兵役義務を課しているのは評価できます。ただ、女子は兵役中でも
化粧を自由にすることが許可されており、髪の毛も長いまま過ごすことが可能です。任務は事務部門や訓練教官、まれに検問(女性イスラム教徒の
身体検査は女性兵士が行う)などであり、戦闘激化地域へは殆ど投入されません。それに対し、男子は
丸刈り(あるいは、限りなく丸刈りに近い短髪)を強制され、任務も危険な最前線での戦闘を要求されるなど、同じ兵役でも内容に相当の男女差が存在します。また、
良心的兵役拒否の取扱にも差異が存在し、女子の場合、
3分の1程度が認められるののに対し、男子は原則的に良心的兵役拒否が認められていません(ただし、ユダヤ教の神学校で学んで
超正統派ユダヤ教徒と認められれば免除されます)。
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