今回は中東地域の話題から少し離れて、
ロシアの兵役制度に関して解説します。
ロシアでは現在、
徴兵制が施行されています。ロシアの人口は約
1億4000万人で日本の総人口より少し多い程度ですが、ロシア軍の兵員数は約
100万人であり、自衛隊(24万人)の4倍以上も存在します。兵役期間は
1年間で、男子にのみ兵役義務が課されています。なお、2004年に発効した
代替文民勤務法という法律が存在し、
良心的兵役拒否が合法化されており、民間施設で3年半、又は軍事施設で3年間の代替奉仕を選択することができます。大卒の場合、奉仕期間は半分で済みます。ただし、徴兵委員会が代替奉仕者の任地を決めるため、自宅や家族の近くで働ける可能性は低いそうです。他にも、特定の大学に
軍事教練のコースが設けられており、それを履修すれば兵役が
免除となります(プーチンはこの方法で兵役を免除になっている)。
旧ソ連時代、軍の総員は
500万人を超えていました(ロシア共和国だけじゃなく、その他のソ連構成共和国も含める)が、ソ連崩壊後は旧ソ連諸国の人員が抜けて、ロシア軍の兵員は200万人台に減少しました。更に、装備の近代化と人海戦術に頼らない軍事ドクトリンへの変更を進める中で兵員数削減が続き、現在は約100万人になっています。一時期、更に兵員を削減して軍の総数を80万人にする計画が練られていましたが、将校などの抵抗で頓挫しています。
このように、昔に比べてロシア軍の定員は大幅に減少しているのですが、それでも100万という大軍を維持しており、ソ連崩壊以後の少子化で若年男性の人口が減っていることも原因で徴兵制廃止の実現が困難になっています。ただ、この100万人の内訳の多くを旧ソ連時代からの将校など老兵が占めており、軍の機能が低下していると言われています。
数年前、徴兵制を廃止して志願制に移行すると政府が今後の見通しを立てたのにも関わらず、徴兵する兵士の数が増加しています。ロシア軍は新兵訓練で丸刈りが強制され、イジメやシゴキなども厳しいことが有名であり、何とかして兵役を逃れようとする男性が多いです。チェチェン紛争などでは徴兵された兵士も前線に投入され、ゲリラに拉致されて斬首される映像がインターネットに出回るという事態も発生しています。ただ、上述したように大学へ進学できる中流以上の家庭出身者は軍事教練を履修することで兵役免除になったり、そうでなくても良心的兵役拒否を行って代替役務を選択する者も多いため、同年代の男子(30万~40万人が徴兵検査の対象)の内、実際に徴兵されて軍に入隊するのは
1割程度となっています。
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