今回は、
中東地域の兵役制度を概説します。
中東と言えば、
イスラム教の戒律が社会を支配しており、厳しいイメージが先行していますが、徴兵制に関しては意外と甘い部分が存在します。例えば、ワッハーブ派で厳しい戒律で有名な
サウジアラビアは
志願制であり、他にも、
アラブ首長国連邦も
志願制となっています。アラビア半島周辺の王制国家は殆どが志願制です。宗教的な厳しいイメージと兵役義務の有無は必ずしも一致しないということです。
その一方、政教分離がなされて世俗的な国家である
トルコや
エジプトは
徴兵制が施行されています。また、イスラム革命を経験した
イランも
徴兵制です。他には、ユダヤ教の
イスラエルが
徴兵制となっています。イスラエルの場合、
女子にも兵役義務が課せられている稀有な国家です。
以上のように、世俗的で民主主義が機能しているトルコやイスラエルのような国ほど徴兵制が義務とされており、逆に、王制国家でイスラム教のコーランに基づいた統治がされているアラビア半島の国が志願制という傾向があります。「民主主義国家」というと、「優しくて人権意識が高い」というプラスイメージがありますが、兵役に関して考えると逆に厳しく、人権無視の側面が存在します。トルコなどは良心的兵役拒否も認めていません。
以下に、中東地域(パキスタンからモロッコまでイスラム圏の国家を幅広く含める)の国家の兵役義務の有無をまとめます。
・
徴兵制が施行されている国家
トルコ、イスラエル、エジプト、イラン、クウェート
・
志願制の国家
サウジアラビア、アラブ首長国連邦、ヨルダン、オマーン、イエメン、モロッコ、アフガニスタン、パキスタン
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